設立趣意書
北里柴三郎博士とEmil von Behring博士によって1890年に発見された免疫現象の実態を担う抗体分子は1975年 Georges Köhler博士とCésar Milstein博士らによる モノクローナル抗体の発明により新しい時代を迎えました。モノクローナル抗体技術は生命科学研究を支えるだけでなく治療薬や診断薬など有用なバイオ産業にも直結する重要な基盤となりました。
21世紀はバイオの時代と言われて久しいですが,ヒトゲノム解読という一大イベントの後,バイオインフォマティクスや構造生物学など解析技術やIT技術の画期的な進展にともない,これは現実化しつつあります。同時にバイオ医薬においてもインスリンに代表される第一世代のバイオ医薬から今世紀に入ると抗体を中心とした第二世代のバイオ医薬が主流となり,更に抗体工学の発展により新しい抗体医薬が世界中で開発されている現状です。更に,抗体を含む広く分子認識材料はコロナウイルスの検出という直近の社会的ニーズにも直面し,この課題解決には医薬・診断業界だけではなく今まではバイオには触れる機会のなかった産業分野にまで広くその重要性と必要性を認知されるところとなりました。
これらの現状を踏まえ従来の医薬・診断分野を中心としつつもこれらの分野以外にも門徒を広げ分子認識材料としての抗体および抗体様分子を学術交流の中心として議論・教育することを目的にここに,日本抗体学会(The Antibody Society of Japan)を2022年4月1日設立することといたしました。今後は年会のみならず各国の抗体学会と協力して国際シンポジウム等を開催し,我が国のアカデミア・産業の間を繋ぎ抗体関連技術の発展と振興に貢献していくことを期待しています。
日本抗体学会 設立準備委員会
根本直人(埼玉大学)
梅津光央(東北大学)
村上明一(徳島大学)
伊東祐二(鹿児島大学)